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これからの話をしよう

これまでの私の人生の色々なことを思い出していた。
ふと思い出されたのは、中学2年生の頃の帰り道。校舎裏には海へ続く川が流れていて、敷地を一周するように土手があった。
部活帰りだったか、その道を一人自転車で漕いでいた時に大きな月を見た。普段はとても汚く薄暗い川が、その時だけはキラキラと輝いていて、家々や街灯の灯りが水面に反射し、まるで空の星をたくさんこぼしたように水の中で煌めいていた。その時の私は何も心配するものはなく、ただひたすらにそういった自然の美しさに身を委ねることができた。


子どもの頃に住んでいた家には二段ベッドがあった。年上の兄が上の段、妹の私は下の段で眠る。窓際に置かれたベッドからは、少し顔をあげると夜空を見ることができた。
当時の私は上の段はちっとも羨ましいとは思わず、むしろ天井にある木目が私を覗き見る顔のような気がしてどうにも怖かったのを覚えている。
父からのお下がりでもらった双眼鏡で初めて月の模様が見えた時は、はるか彼方の景色をただ一人、私だけが見ているような気になり高揚した。
この季節になると思い出すのは、小学生の時に教室のベランダから見た青々と広がる田んぼ。あたり一面に風が吹き抜けると、その風の通り道を目で追うことができた。倒れてはすぐに立ち上がり、また倒れる。一斉にダンスをするように踊る稲に見入ったのを覚えている。



過去を何気なく振り返った時に鮮明に思い出されたのは、いつも自然の美しさだった。不安定な時代の中で、私はいったいこれから、そういった思い出たちをいくつ積み重ねられるのだろうか。
ご飯を食べて、よく眠り、自然を愛でて、ギターを弾く。大好きな人たちと話をし、毎日を積み重ねていく。強くあれと自分に言いきかせた。